労災保険の手引
by Tobuki
業務上かどうかの具体的判断は、その状況によります。
運動競技会など社内行事での事故については、次の全てが満たされていれば、通常、業務上と判断されます。
次の基準から業務遂行性が判断されます。付き合い程度の場合は認められません。
たとえ業務に関連している場合であっても、直接の原因は「他人の故意」にあるため、一般的には業務起因性はありません。もちろん、個人的なうらみによる暴力による災害については、認められません。
ただし、災害の原因が業務にあって、その災害との間に相当因果関係が認められる場合は、業務起因性が認められる場合があります。
工事反対の地域住民から暴行を受けた場合に、終始無抵抗であった場合は業務上災害として認められます。ただし、口論のすえの喧嘩には認められません。
実務に就く前の研修中の内定者であっても、労働契約関係にあるとみなされる場合があります。賃金支払の有無も労働者性からいえば大きな判断基準となります。なお、事故が予測される実習などの場合には、当然、使用者には安全配慮義務があり、責任を負うことになります。
実際に証明するのは簡単ではありませんが、自宅での仕事時間、内容、量等を勘案して、労災認定される可能性はもちろんあります。
取引先で本来の業務以外の業務をしたとき、次のような場合は、業務災害と認められます。
なお、親切心から取引先の仕事を手伝ったというような場合は、業務災害とは認められません。
出張中は、広く業務遂行性・業務起因性が認められます。
出張の際に、懇親の目的で宴会など飲食行為を行うことがありますが、これも一般的には業務に通常伴うものとされています。よって、これと関連して事故が発生した場合には、業務災害と認められる可能性があります。
もちろん、著しい逸脱行為や、業務との関連が全くない私的行為は認められません。
大分労基署長(大分放送)事件 福岡高裁 H5.4.28
出張先で業務終了後、同行者と飲酒を伴う夕食をとった後、宿泊施設内で転倒し、4週間後に急性硬膜外血腫で死亡した。福岡高裁は、「業務とまったく関連のない私的行為や恣意的行為ないし業務遂行から逸脱した行為によって自ら招来した事故」ではないので、業務起因性は否定できないと判断した。
(2005.9.5)
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