労働組合の作り方
by Tobuki
正当な争議行為には、労働組合法で3つの面から法律上の保護が与えられます。
正当な争議行為について刑事罰を科すことはできません(憲法第28条、労組法第1条第2項)。
正当な争議行為を行ったことによって使用者に損害を与えても、使用者は労働組合又はその組合員に対し損害賠償を請求することはできません(憲法第28条、労組法第8条)。
使用者は正当な争議行為を理由に組合員に不利益な扱いをしてはいけません。たとえば、使用者は正当な争議行為を指導したり参加したりしたしたことを理由に、組合役員や組合員を解雇するなどの不利益な取扱いをすることはできないということです。また、使用者は、組合がストライキをするかどうかといった重要な決定をしようとしているときに介入してはいけません(憲法第28条、労組法第7条)。そして、そのような使用者の行為があれば、労働委員会による救済の道が開かれています(労組法第7条、第24条など)。
刑事免責や民事免責が認められるためには、当該争議行為が正当なものでなくてはなりません。争議行為が正当であるかどうかは以下に挙げるような争議行為の主体、目的、手段、開始時期・手続、態様等によって個々の事案ごとに判断されます。
なお、スト正当性については、実務上、使用者に当該争議行為が正当でないことの立証責任があるとの扱いとなっています。
もっぱら立法・行政等の同行に抗議することを目的としたストは、違法とされます。判例では、「日韓条約批准阻止・ベトナム戦争反対」(名古屋地裁 S43.10.21)、「警職法改正反対」(最高裁 S48.4.25)、「安保反対・侵略兵器製造抗議」(広島地裁 S54.1.24)、「原子力船むつの佐世保入港等の反対」(最高裁 H4.9.25)等を目的とするような、いわゆる“政治スト”は、民事・刑事の免責は受けられないし、不当労働行為の排除も求められないとされています。ただし、労働条件の向上を第一目標とし、副次的に政治的主張を行うものは不当とはいえません。
ストライキに先行して、団体交渉が十二分に行われることが求められます。判例でも、組合側が団交に応じずただちに争議行為に入った事案、組合側の団交申入に対し使用者が回答を出す前の争議行為突入については、正当な争議行為ではないとしています(横浜地裁 S24.3.25、浦和地裁 S35.3.30)。ただし、対立の状況によっては判断が異なる場合もあります(大阪地裁 S33.7.17)。 団交がこれ以上不可能だと判断される場合のストは違法だとはいえません(東京地裁 S41.2.26、横浜地裁 S25.6.6)。
組合規約にスト権投票の規定があれば、それを実施した後にストライキは実行に移されます。しかし、必要な手続を踏まないままストを実施した場合でも、実質的に組合員の合意を得るのと同様な客観的な状況があった場合は、正当だと判断される場合があります。
組合の一部の構成員が組合全体の意思を無視して行う、いわゆる“山猫スト”は、正当ではないとされています。後日、労働組合の正式機関が、組合ストと追認しても、違法な争議行為が適法なものになるものではありません(福岡地裁小倉支部 S25.5.16)。
年次有給休暇を労働者がどのように利用するかは労働者の自由でです。しかし、労働者がその所属の事業場においてその業務の正常な運営の阻害を目的として一斉に休暇届を提出して職場を放棄する場合は、年次有給休暇に名をかりた同盟罷業にほかならないから、それは年次有給休暇権の行使ではない」という通達(昭和48年3月6日基発第110号)が出されています。
年次有給休暇は労働者の時季指定と使用者の時季変更という労基法によって定められた労使の利益調整方法を前提としていますので、労働者が所属する事業場のストライキに年休を利用することは、年次有給休暇の主旨を逸脱すると考えられるからです。
この形の闘争は、次の条件によって結論が違ってきます。
1.は争議行為になりません。そもそも36協定がなければ、残業・休日労働の拒否は争議行為にはなりません(その命令に服する義務は、そもそもないため)。ただし、36協定が繰り返し更新されてきたにもかかわらず失効してしまった状況下で、36協定拒否闘争を組んだ場合は、争議行為とみなされる場合があります。上記2.の状況下で行われた残業拒否闘争については、争議行為とはなりえないとされており、3.の場合には争議行為であることに疑問はないという判断が一般的です。
企業のある部分においてのみ行われるストライキ
ある特定の職場の特定の組合員を指名して、その者だけにストライキを行わせること
もとよりストライキは常に全面ストである必要はなく、組合の統一的な意思のもとに行われる限り、上記ストも正当性を失うことはありません。指名ストについて、争議権の濫用だと主張される場合が多いようですが、あらかじめ所定の手続を取った上で行われた指名ストは、正当性の範囲を逸脱しないという下級審判決があります。
争議行為中に使用者から2,000円あまりの賃金カットされたため、集金した電気料金900余万円を使用者の意思に反して組合長名義の預金として保管したという事案において、最高裁は、「使用者の被る不利益と労働者の要求利益との比較衡量により、当該金銭の留置行為が社会通念上権衡を失する場合には正当な争議行為とはいえない」という立場をとって、この争議行為は正当性の限界を逸脱しているという判断をしています。
(2008.4.12)
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